本年度は、第一段階として、シリコン(Si)基板を用い、その上に形成したシリコン酸化膜(SiO_2膜)上に半導体ナノ結晶を成長させることを試みた。ナノ結晶としては、第一段階として炭素(C)を候補として検討した。Cナノドットを作製するにあたり、原料ガスとしてフェナントレン(C_^<14>H_^<10>)を用い、集束したGa^+イオンを照射し分解することにより形成した。最初に、Si上にドライ酸化で20nmのSiO_2膜を形成し、フォトリソグラフィにより50μmのホールを形成した。続いて、ドライ酸化で5nmのSiO_2膜を形成し、その上に100nm径のCドットを等間隔に配列させた。最後にラジカル酸化によりドットを取り囲むようにコントロール酸化膜を形成した。本研究では、レーザーラマン分光法および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて結晶性評価を行った。続いて、MIS構造を作製し電気的評価を行った。ラマンスペクトルを解析した結果、グラファイト構造による積層規則性が確認できた。次に、電気的評価として、MIS構造における容量-電圧(C-V)特性を評価した。具体的には、ゲート電極に正バイアスを印加して基板側より電子注入を行った。電子注入前では、C-V曲線にヒステリシスは見られなかったが、電流ストレスを印加することによりフラットバンド電圧のわずかな変化が見られた。この現象により、ナノ結晶が作る量子井戸に電荷が捕獲され、総電荷量に相当するフラットバンド電圧変化が現れたものと考えられる。今後の方針として、電荷注入後、ゲート電極を負バイアスにして量子井戸からの電子放出を行う。さらに、電子注入におけるパルス電圧の最適条件を見出す。
|