超高集積回路の微細化に伴い、ナノ領域で発現する量子効果をデバイス動作に応用する動きが活発化している。本研究では量子効果を発現すべく、量子ドットを制御しながら形成し、次世代不揮発性メモリとして期待されている量子ドットメモリの実現を目指した。量子ドットは、集束イオンビーム(FIB)を用い、フェナントレン(C_<14>H_<10>)をGa^+イオンで分解することにより形成した。各ドットの径は100nmとした。本研究ではレーザーラマン分光法によるカーボン量子ドットの結晶性評価、走査型イオン顕微鏡(SIM)によるドット配列の評価および原子間力顕微鏡(AFM)による表面形状の評価を行った。次に、薄膜トランジスタ(TFT)構造を作製し電気的特性評価を行った。SIMおよびAFMによる表面観察の結果、炭素ナノドットが規則的に配列していることが確認できた。次に、ラマンスペクトルの解析を行った結果、炭素ナノドットは、非晶質状態のいわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)であることが確認された。熱処理を行ったところ、有限サイズの結晶にみられるフォノンの散乱に起因するピークの強度の増加およびグラファイト構造に起因するピークの高波数側へのシフトが確認できた。これは高温での加熱処理によりグラファイトの網平面の成長と積層の積み重ねの増加とともに積層規則性が徐々に増加し、アモルファス状態から有限サイズの結晶化が促進されたためと考えられる。堆積時におけるGa^+注入及びDLCのグラファイト化によりバンドギャップの縮小(深い量子井戸の形成)が期待できる。本年度は、ペンタセンをチャネルとしたTFTを作製した。量子ドットに電荷注入を行ったところ、ドレイン電流の低下および閾値電圧の増加が観測された。今後は、学習デバイスとして、可逆的メモリ動作及び電荷保持特性を検証する方針である。
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