研究概要 |
本研究は,主として医療に用いるためのディスポーザブルなマイクロ化学デバイスを実現するため,新しいキーコンポーネントの創出と,コンポーネントを組み込んだデバイス制御技術およびデバイス作製技術の確立を目指す.本年度は以下のコンポーネントおよびデバイス化技術に関して研究を進め,それぞれ新しい成果を得た. 1)サンプルの複数チャンネルへの定量分離を行うための,可動部のないマイクロバルブ. ガラス基板上でのマイクロヒータによる実験をベースに,本年度は樹脂基板上にマイクロヒータを組み込んだ実験を行い,プラスティック基板への蒸着によるマイクロヒータおよび電極形成,プラスティック成形した流路との組み合わせによるマイクロバルブの動作実験を行い,基本性能を確認した. 2)遠心分離を必要としない血球分離マイクロフィルタ. マイクロ柱状構造を用いて,血漿成分は通過するが血球成分はフィルタ全面で捕獲できる迷路構造を提案し,フォトリソグラフィにより作製し,原理実証を行い,血球分離を確認した.その成果を特許出願した. 3)サンプルと試薬の効率のよいマイクロ混合器. 流路に微細構造を組み込み,流体に回転力を付加し,流体を[90°回転-分岐-90°回転-合流]すると2層流を4層流変換できる.このユニットを並列接続し,2層流-8層流変換流路を実現した. 4)基板材料を樹脂とし,樹脂の持つ可塑性を生かしたディスポーザブルなインプリント作製技術. 無電解めっきとフォトリソグラフィーを組み合わせ,流路のマイクロ金型作製を行った.プロセスを工夫し,流路中の微細構造を有するマイクロ金型作製が可能となった.さらに樹脂成形装置の改良を行い,金型を用いた樹脂成形と,蓋の熱圧着を行い,オールプラスチック化の目処を得た.
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