微小流路内の閉空間で物理的な操作、加工を実現する際に、細胞の物理特性を把握することは重要である。平成17年度は細胞単体の物理特性を計測するシステムの構築を中心に行った。特に、細胞の堅さといった物理的特性は加工や操作に関しては重要であり、また細胞の状態によっても、その特性は変化する可能性があり、細胞の物理特性を単体レベルで評価することが重要である。評価システムとしては、微小力センサを有した指先による細胞の堅さ計測部、および細胞の様々な方向の堅さを計測できるようなマイクロマニピュレータ部、さらに細胞単体を、微小流路を経由し、マイクロマニピュレータ部指先付近に搬送する微小流路系部に大別できる。平成17年度については、主に微小力センサをマイクロマニピュレータ部指先に設置し、数ナノニュートンの力計測を可能とする微小力計測系を試作した。微小力センサはMEMS技術を中心に、シリコンウェハー上に形成されたひずみ抵抗の変化により計測する。特に本事業では細胞といった液中の対象物の力計測となることから、電気系の水の影響が無いようなコネクタ部分の防水化が求められる。一方、細胞単体の微小流路を利用した搬送部の設計に関して基礎実験を行った。微小流路の作成にはPDMS(ポリジメチルシロキサン)を利用し、いくつかの流路径における流れを評価した。特に50ミクロン以下の流路径となると流れの制御が極めて難しいことが判明し、複数の支流への切り替えによって流れを分散することで、厳密な流れの制御が可能となるような設計を行った。平成18年度は計測システム内の各部を組み合わせ、細胞単体の物理特性を評価しつつ、微小流路内での基本的な操作、加工を行っていく。
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