組合せ最適化問題は配置問題、スケジューリング問題など多くの場面に現れ、利用価値の高い問題であるが、NP困難と呼ばれる計算困難な問題でもある。これらの問題に対して、近似解を実用時間内で求める遺伝アルゴリズム、Tabu Searchなどのメタヒューリスティックスアプローチが有効な結果をもたらしている。これらを利用するに当たって、どのメタヒューリスティックスアルゴリズムが有効な手だてであるかは重要な問題である。そこで、本研究では各問題に対してアルゴリズムの優位性を明確にし、適切な解法を提示するため、確率モデルを構成し理論的にその求まる解の分析をおこなう。 本年度は、求まる解の分布の確率モデルを構築するために必要とされる基礎的統計量を求めるモデルの構築をおこなった。特に、解空間がAR(1)プロセスとしてモデル化できることを検証するために、AR(1)モデルから得られる各種の統計量が現実の問題と近似しているかを検証した。そして、求まる局所解の分布などを推定する確率的解析を行うために必要な基礎的モデルの有効性を明らかにした。特徴として、AR(1)プロセスを用いることにより、多くの組合せ最適化問題、あるいは各種の近傍などに対応する汎用的な解析が可能となる。 さらに、近傍の特徴を解析してそこから得られる知見を用いて、近傍構造をコーシー分布の形状にそった新たな近傍(擬似コーシー分布型近傍)として生成し、この擬似コーシー分布型近傍を用い、ダイナミックなシステム上の変化する局面で、高速に、かつ、高性能な解を得る実用可能な高速メタヒューリスティックスの開発をおこなった。また、数値実験を行い、今回構築した手法が、良質な解への早い収束性を示すことを明らかにした。ここで、本研究の確率的解析によって得られた情報が、高速化において有効なアルゴリズム開発の知見となりうることが示された。
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