平成18年度には、前年度の研究で得られた日本国債のゼロイールドのデータに基づき、金利の期間構造とマクロ経済変数との関係性を、シミュレーション分析を可能にする3次元金利モデルの形に総合するため研究を進めた。 1. Nelson-Siegelモデルによるイールドカーブの表現と時系列構造の統合 各時点の利付国債の価格データから推定されたゼロイールドに対してNelson-Siegel型と呼ばれる関数をフィットさせることにより、イールドカーブの形状の時間的変化を、レベル、スロープ、曲率という3つの成分の変化に要因分解し、それぞれの経済学的含意に即してマクロ経済変数との対応関係を分析した。 2003年までの11年間をみると、レベルはインフレ動向と金融政策を反映して変動し、スロープや曲率は他の資産市場の変数や生産の動向等と関連して変動していることが見出された。 2. 3次元金利モデルの構築 次に、3次元金利モデルの構成と推定を行った。ここではNelson-Siegelモデルにより抽出されるレベル、スロープ、曲率の成分を観測されない状態変数とする状態空間モデルを想定し、カルマンフィルタによる推定を実行した。また、Nelson-Siegelモデルに含まれる未知パラメータも時変とする非線形状態空間モデルの推定も行った。さらに、外生的なマクロ経済変数を制御入力として受けるシステムにモデルを拡張し、景気動向、海外金利、金融政策等がイールドカーブ全体の動きに及ぼす影響を評価した。 3.モデルの選択・推定が実行されたことにより、金利の期間構造のダイナミクスについての知見が得られ、外生的なマクロ変数の動向にっいて一定のシナリオを想定すれば予測やシミュレーション分析が可能になった。なお、モデルを利用した仮想ポートフォリオによるリスク管理の模擬実験やその詳細な評価は今後の課題となった。
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