研究概要 |
本研究は,目的関数の微分可能性等を要請しない制約付き非線形最適化手法として先行研究で提案したα制約法の改良と多目的最適化及び構造学習への適応を目的としている。昨年度は、差分進化(DE)にε制約法を適用したεDEについて等式制約を持つ問題における制約条件の新たな緩和法の検討,低精度近似モデルに基づく最適化手法における関数評価回数の削減に関する準備研究,多目的進化アルゴリズム(MOEA)であるNSGAIIの改良を行ったが,本年度は,この継続研究として、以下の研究を実施した.(1)退化型DE(DE^d)をニューラルネットワーク(NN)の構造学習に適用し,株価予測へ応用した.NNを用いたテクニカル分析による株価予測において,DE^dを用いてNNの構造学習し,その結果得られたNNとDEによって最適化したNNを用いた株価予測の結果を比較し,DE^dによって簡潔なネットワーク構造が得られ,かつDEによるNNに比較して予測精度の高いNNが得られたことを示した.(2)εDEについて等式制約を持つ問題における制約条件の緩和方法について,引き続き検討を行った.(3)比較推定法の改良を検討した.進化的アルゴリズムのような集団的降下法を用いた手法を提案してきているが,集団的降下法は関数評価回数が多くなるという問題点があり,これを解決することは重要である.本研究では,低精度近似モデルの利用と,近似値の比較手法として比較推定法を提案している.比較推定法では,近似値による関数値の大小関係を推定するが,推定する関数面の複雑さに応じて,推定に余裕を与える必要がある.本年度は,推定の余裕として,1つの統計量と余裕調整パラメータの積を用いた.1つの統計量としては,関数値(真値)標準偏差,近似値の標準偏差など幾つかについて比較検討を行い,特にこの2つの標準偏差については効果にあまり差がないことを示した.また,余裕調整パラメータについては,固定値の場合と,探索過程の進行に伴って値を適応制御する場合について検討を行い,探索過程の進行に伴う適応制御必要性と有効性を示した.
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