研究概要 |
平成18年度は破壊伝播速度推定のための破壊エネルギーについて推定問題を扱った.2次元境界積分方程式法と差分法を用いて破壊エネルギー推定の数値計算上の問題点を検討して,従来よりかなり小さな積分間隔でエネルギーを見積もる必要があること(例えば,現在100m間隔で行っている計算を,50m以下,可能ならば25m程度にする),さらにこの種の研究で多く使われている食い違い格子差分法では,すべりと応力時間積分間隔の半分だけずれて計算されるから問題が生じていること,これを改善するには,一部陰解法を導入することなどが必要であること,などがわかった.このうち積分間隔を小さくすることは,計算機容量を8倍から64倍大きくすることが必要となり,計算実現性に問題が生じる可能性がある.一方,データ解析による震源過程の時空間分布を利用した数値技法などとともに詳細に検討した結果,これに変わる可能性のあるものとして単純な破壊速度予想指針の手がかりを得ることができ,この検討を行った.それは応力降下量が負の場所の存在と,それによる破壊速度低下をデータから得たことであった.具体的には,波形インバージョンの結果を詳細に検討することで,負応力降下量域に破壊伝播速度低下が見られたことである.これを用いると負応力降下が予想されるアスペリディとアスペリティの境界やアスペリティ端に破壊速度低下が予想されることになる.この内容を,2006年12月に行われた米国地球物理学連合の秋季大会で発表した.また一昨年度行った断層境界条件にかかわる差分技法の改良の研究をまとめた論文が昨年度,国際学術雑誌(査読付き)Pure and Applied Geophysicsに掲載された.
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