研究概要 |
本研究の目的は,次の南海地震津波発生時における住民の防災意識を高め,住民が主体となって自主的避難行動を起こす動機付けを行うための手法を開発することにあり、3点に課題を絞り次のような研究成果を得た。 1)これまで十分解明されていない瀬戸内海沿岸域の津波の挙動に関する進展: 既存の宝永(1707)、安政南海(1854)地震断層モデルを複数移動させたモデルおよび中央防災会議モデルを用いて瀬戸内海を各水域(灘単位)に分け、それぞれの津波の危険度の評価をしえた。評価に用いた指標は、津波の到達時間、津波高および津波の流速である。さらに、津波来襲時の瀬戸内海各水域の周期応答特性ならびにこの水域に侵入した津波の減衰に長時間(20時間程度)かかることを明確にした。 2)避難行動に及ぼす阻害要素の影響の究明、人的被害予測の精度向上: モデル地域を対象として、津波の人的被害最小化因子として津波の規模、沿岸構造物の地震動・液状化による被害程度、門扉の開閉状況、住民の避難開始時間を選定し、それらが人的被害に及ぼす影響度を定量的に評価しえた。 3)迅速な避難行動の動機付けの促進手法の提言: 2)により対象地域における人的被害最小化対策を具体的に住民に示し、避難行動の動機付けを促進できることを明らかにした。同時に、住民は地震の震度、液状化の有無、津波の到達時間、津波高や浸水高を知ることに加え、各自の地域の弱点(地形学的、気象学的、社会学的)を理解し、地震発生時から起きる時系列的被害のイメージを知ることが必要であることを痛感した。そこで、改めて各種の防災教育を行い多くの成果を得た。具体的には、1946年の昭和南海地震の体験者の聞き取り調査を行い、小中学校で災害の実態を理解させること、大学生に対し防災意識調査に基づき防災意識の向上を図るとともに、各種の防災ゲームも考案し防災教育にも資する有用なデータを得た。
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