地震災害の様相は、時代による社会変化の影響を強く受ける。例えば、人口減少や少子高齢化による人口構成の変化、都市構成の変化等により、都市は新たな地震災害を生む可能性がある。従って、現在の都市を対象とした地震被害想定ばかりでなく、未来都市の動向を予測した被害想定が肝要である。 そこで本研究は、地震時における人的被害や建築物・土木構造物等の直接被害と、生活支障等の間接被害の双方を対象として、日本の未来社会における中枢機能都市の地震脆弱性を評価するものである。 第一に、都市の地域特性の把握に立脚した地震脆弱性評価手法に関する研究であり、地域特性の把握手法、都市の地震脆弱性評価の評価項目の選定と脆弱性評価手法について研究する。第二に、人口と人口構成に関する変容を対象として、未来社会における都市の変貌の一断面を推定し、その未来予測を行う。人口・人口構成は災害ポテンシャルの基礎的情報であり、将来人口の推定を行って都市の変貌の一断面を把握する。 研究計画第一年度における研究成果は、下記の通りである。 (1)地震による直接被害として、人的危険及び建築物被害、出火危険、交通機関の被害、火災の延焼危険と救助困難、また、それらによる二次的な人的危険の様な間接被害として帰宅困難やライフライン被害による生活支障、及び経済活動支障について、主成分分析を用いて地震災害脆弱性評価を行った。 (2)未来社会の地域構成の予測手法について、国立社会保障・人口問題研究所がコーホースト要因法により算出した将来人口推計を基に、各種統計項目のデータの性質や、これまでの変化を考慮し、線形回帰・重回帰分析等の各種回帰分析や世帯主率法等の統計的手法を用いて予測を行った。 (3)なお、地震被害想定の基礎である地震ハザードマップ作成に関わる地震動予測に関し、位相特性を考慮した模擬地震動作成手法の研究を行った。
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