研究概要 |
1.塩基配列レベルでのmicroRNA(miRNA)多様性解析 3つの人類集団(日本人、ヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人)におけるmiRNAゲノム領域におけるDNA多型解析は、実施計画通りに完了し、詳細なSNPマップを作成し終えた。今年度の研究により明らかにしたことの中で特記すべき点は以下の通りである。 (1)mature miRNA配列内にはDNA変異を認めない一方、その前駆体であるpre-miRNA配列内には複数のDNA多型サイト(precursor SNP)を認めた。pre-miRNA配列内の塩基多様度は、mRNAのタンパク質コード領域のそれと同程度であり、量的な面からみると、precursor SNPは疾患関連SNP解析の対象となり得ると考えられた。 (2)機能的な側面からは、自身の生合成に影響を及ぼす作用を有するprecursor SNPを見いだした。miRNA生合成不全と疾患との関連に関する研究の可能性を示す知見である。 これらの解析結果の一部は、アメリカ人類遺伝学会年会(ASHG 55^<th> Annual Meeting, Salt Lake City, Utah. October25-29,2005)で口頭発表し、現在、論文化を進めているところである。 2.リアルタイムRT-PCR法によるmiRNAの網羅的解析 計画に従い、miRNA前駆体についての発現解析システムを構築し、種々の細胞・組織における網羅的発現解析を行った。それに加えて、市販のTaqMan MicroRNA Assays (Applied Biosystems)を用いて、mature miRNAの発現解析も平行実施した。その結果、精巣に発現しているmiRNAのなかで、男性不妊症(非閉塞性不妊症)と関連して発現変化するという興味深い発現パターンを示す複数のmiRNAを見いだした。現在、それらのmiRNAに関しては、情報学的手法と分子生物学的手法とを組み合わせて、精巣での標的遺伝子の同定を試みているところである。
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