研究概要 |
冬眠哺乳動物シマリスの冬眠特異的タンパク質HP-20,HP-25,HP-27は,冬眠時に血液中より著しく減少するタンパク質複合体の構成タンパク質として発見された。HP-20,HP-25,HP-27遺伝子は肝臓特異的に発現しており,冬眠時には転写が抑制されている。培養細胞を用いたプロモーター解析などから,各遺伝子の肝臓での転写には,HP-20遺伝子では転写因子HNF-1,HNF-4,USFが,HP-25遺伝子ではHNF-4,USFが,HP-27遺伝子ではUSFが関与していることが明らかになっている。 本研究では,冬眠特異的遺伝子の冬眠に伴う転写調節にこれら転写因子がどのように関与しているかを調べるため,クロマチン免疫沈降法を用いて,冬眠特異的遺伝子のプロモーター領域への転写因子の結合を非冬眠時と冬眠時の肝臓とで比較した。その結果,冬眠時には転写が抑制されているにも関わらず,非冬眠時同様,冬眠特異的遺伝子のプロモーター領域に転写因子が結合していることが明らかになった。そこで,冬眠に伴う転写調節がヒストン修飾によって制御されている可能性について検討するため,クロマチン免疫沈降法を用いて,冬眠特異的遺伝子のプロモーター領域に結合しているヒストンの修飾を,非冬眠時と冬眠時の肝臓で比較した。転写活性化に関わるピストンH3の修飾として,4番目のリジンのトリメチル化,9および14番目のリジンのアセチル化,10番目のセリンのリン酸化,転写抑制に関わる修飾として,9番目のジメチル化について解析した結果,非冬眠時には,4番目のリジンがトリメチル化され,14番目のリジンがアセチル化されていることが明らかになった。これらの結果より,冬眠特異的遺伝子の冬眠に伴う転写調節はピストン修飾のレベルで制御されていることが明らかになった。
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