研究概要 |
原索動物ホヤのライフサイクルにおける遺伝子発現プロファイリングの解析 ホヤ全ゲノムの約7割をカバーする大規模オリゴDNAマイクロアレイを作製し、ホヤの受精卵から老成体までの各ステージサンプルあわせて19種類のサンプルからRNAを調製して遺伝子発現プロファイルの解析を行った。その結果、ホヤの10,415遺伝子について受精卵から老成体までのライフサイクルにおける遺伝子発現の変動パターンが明らかになった。次に、変動パターンの類似性に基づいたクラスタリングを行った。その結果、10,415個の遺伝子は49個のサブクラスターに分類でき、それらは大きく5つのカテゴリー(A:発生特異的遺伝子群、B:発生中期-成体期遺伝子群、C:成体特異的遺伝子群、D:非発現変動遺伝子群、E:母性遺伝子群)にまとめることができた。5つのカテゴリーに分類される遺伝子の総数では、E:母性遺伝子群が38.8%で一番多く、B:発生中期-成体期遺伝子群19.9%、C:成体特異的遺伝子群15.8%、A:発生特異的遺伝子群13.0%、D:非発現変動遺伝子群12.5%の順であった。また、変態時期に特異的に発現が亢進する変態関連遺伝子が3%、成体各組織に特異的に発現する遺伝子が1.6%、老成体の時期に発現が亢進する老化関連遺伝子が2.8%存在することも明らかになった。ホヤの遺伝子は、塩基配列のホモロジーから機能が類推できるものは全体の1/3程度しかなく、残り2/3の遺伝子は塩基配列からは機能の推定ができない。今回、ライフサイクルにおける遺伝子発現パターンを指標にした上記分類方法によって、ホヤの10,415遺伝子のこれまでにない特徴付けを行うことに成功した。この結果は、今後のホヤの遺伝子の機能解析に有益なだけでなく、ホヤとヒトで共通の遺伝子の機能解析にも多いに役立つと考えられる。
|