研究概要 |
本研究の目的は、バイオインフォマティクスの手法を用いて抗HIVを受けるAIDS患者体内でのHIVの進化過程を解析することにより、薬剤耐性獲得のメカニズムの解明及びAIDS治療の予後予測に寄与することである。 平成17年度では、方法の重要な部分であり、我々が以前開発した「遺伝距離準拠型逐次リンクアルゴリズム」の改善を重点として研究を進めた。いままで、異なる時点間のウイルス準種クラスタ(進化距離に基づいて相関係数で求めた)の間において、進化距離が最短である過去の"1つのウイルス準種"を祖先として同定したことに対して、過去のウイルス準種クラスタとの間の平均の進化距離を計算し、最小の値を取る"クラスタ"を祖先として進化経路を同定した。また、HAARTを受ける患者体内でのHIV準種はある時点で測定できなかったとしても、完全に絶滅したわけではなく、ある条件下で再び増殖して主要なウイルス集団になることがよくあるため、異なる時点間の可能な進化経路において過去の全ての時点を遡って調べた。さらに、正の淘汰進化の探索について、遺伝子の機能的に重要な部位とそうでない部分のds(同義置換率)とdn(非同義置換率)を別々に推定することにした。 今年度の研究成果は2つの国際学会(International HIV Drug Resistance Workshop, June, Canada ; European Conference on Computational Biology, September, Spain)と2つの国内学会(分子生物学会、Chem-Bio Informatics meeting)で発表され、国際誌Antiviral Therapyにも掲載された(要旨のみ)。現在、我々はこのアルゴリズムについて方法論の論文として作成しているところで、近いうちに国際誌に投稿する予定である。 相互情報量基準による解析に関しては、方法的に大きいな変更がなく、現在新しい症例のデータに適用している段階である。この部分は既成のデータマイニングの手法を利用しているため、その成果について、「逐次リンクアルゴリズム」と別にデータ解析の論文として作成することを考えている。できるだけ多数のサンプルに適用したいため、18年度の後半に投稿する予定である。
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