研究概要 |
平成18年度では以下のような成果が得られた: 1.C4.5による決定木の作成について、新しいエイズ患者6症例のデータに適用した。しかし、Quinlanの相互情報量による決定木は、情報利得比のみを特徴抽出の基準とするため、耐性変異と類似の動きをする多型のサイトを抽出してしまう可能性があることが分かった。そこで我々は正の淘汰を受けるサイトを検出し(PAML)、これらのアミノ酸変異を用いて決定木を再作成した。その結果、より多数の一次耐性変異サイトを抽出することができた。現在、この手法をすべての症例(8-10例)に適用して解析を進めている。 2.「遺伝距離準拠型逐次リンクアルゴリズム」の改良は完成した。 3.耐性変異獲得におけるもう1つ重要なメカニズムーHIV遺伝子内及び遺伝子問の共進化についても解析を試みた。我々は新しい解析プログラムCoMap(Dutheil,2005)をHIVのデータに適用し、Gag-PR-RT領域において共進化解析を行った。その結果、PRのE35DはGagの切断領域近傍のP453Lと遺伝子間共進化するという未知の共進化を見出した。 以上の研究成果は2つの国際学会(7th Annual Symposium on Antiviral Drug Resistance Targets and Mechanisms, Virginia, USA ; Genomes, Evolution, and Bioinformatics 2006. Arizona, USA)と複数の国内学会で発表され、さらに日本進化学会の「ウイルスの進化」というシンポジウムでも講演した。また、HIVの研究と同時に行われたHBVの進化解析についての論文が国際誌Geneに掲載された。 現在、逐次リンク法の論文は作成中であり、19年前半までに国際誌に投稿できる。共進化解析の結果について現在感染研エイズセンターで実験を行われているが、結果が得られ次第国際誌に投稿する。 決定木による耐性変異パー・タンの抽出については、サンプルの類似性が非常に高い場合、PAMLの精度が悪くなり正の淘汰進化サイトを検出できないケースがある。今後この問題について解決策を見つける必要がある。尚、症例数が依然不十分であるため、国際HIVデータベースの中から適用できるデータを抽出し、この解析に使用することを考えているが、19年度中に論文をまとめる予定である。
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