研究概要 |
Streptomyces avermitilisのゲノム解析によって、本菌には他の微生物では見られない多くのシトクロムP450遺伝子を保有することが明らかとなった。これらのシトクロムP450の機能を明らかにするため、大腸菌で大量発現できるように全ての遺伝子をPCRで増幅し発現ベクターに連結した。なお、大腸菌にはシトクロムP450の電子供与体であるフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素遺伝子を保有していないため、Pseudomonas putidaのフェレドキシン還元酵素(camA9およびフェレドキシン(camB)のそれぞれの遺伝子をクローン化するシトクロムP450の下流に配置した。33種のシトクロムP450遺伝子のうち25種がIPTGによる誘導によって発現を確認することができた。他の遺伝子の多くは封入体を形成しているものがあった。誘導を行った大腸菌を用いて薬物代謝で水酸化あるいは脱メチル化が観察されている化合物の変換を試みたところ、14種のシトクロムP450で変換物を生成していることが明らかとなった。8種のシトクロムP450はカルバゾールの4位の水酸化を触媒した。また、4種のシトクロムP450はトランス・スチルベンを水酸化し、5種は脂肪酸のω位の水酸化を触媒することが明らかとなった。これらのシトクロムP450のうち、CYP154A2,CYP107L2およびCYP105Dは多くの化合物を基質として水酸化あるいは脱メチル化を触媒、特にCYP105D7は9種の化合物を水酸化した。一方、CYP105D7と同じファミリーの属するCYP105D6はポリケチド化合物フィリピンのみを水酸化することから、これら2つのCYP105D6とCYP105D7の構造上の相違はシトクロムP450の基質特異性に関して興味深い知見が得られるもと期待される。
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