研究概要 |
タンパク質の動的構造に関して、立体構造データベース(PDB)を基にした2次情報データベースとして、基準振動データベースProModeが構築されつつある。本研究ではその基盤研究としてタンパク質多量体の解析を進めている。完全に対称的な同種多量体に対して対称な基準振動を得るためには、分子間の対称性を保持したままエネルギー極小化計算を行う必要がある。そのためのアルゴリズムを考案したのでプログラムへの実装を行った。 我々がこれまで用いてきたエネルギー計算のプログラムでは2面角のような内部自由度を変数にしている。同種2量体(C_2対称)において、2つの分子の立体構造を同じに保つには、2面角に対する制約条件を課すだけでよい。2つの分子間の並進の自由度には制約をかけずに、相対的な回転の3自由度に対して回転ベクトルの大きさがπとなるような制約条件をかけ、エネルギー極小化を行った。最終的に制約を外す際は、2分子の構造の平均化と極小化のiterationにより対称的なエネルギー極小構造を得た。Trpリプレッサ、Croリプレッサ等について解析したところ、数百の基準振動モードのほとんどすべてにおいて、原子変位がC_2対称操作に対して全対称か逆対称であった。これは低分子における基準振動解析の結果と一致するもので、対称性を保ったエネルギー極小化計算が正しく行われたことを意味する。 同種3量体(C_3対称)では、分子1を基準として分子2及び分子3の回転ベクトルをσ_1,σ_2とすると、それぞれの大きさを2/3πになるように制約するのと同時に、互いに逆向きになるような制約条件(σ_1+σ_2=0)をかければよい。Sentrin (SUMO-2)等について解析したところ、いずれの場合も約1/3が全対称振動モードとなった。残りのモードには対称性が見られないが、振動数がほとんど同じ2つのモードずつペアになっており低分子における縮重振動に対応すると思われる。この他、正四面体(D_2)対称の場合もプログラムを整備した。
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