研究課題
基盤研究(C)
アザスピロ酸は、ムール貝などの食用二枚貝によってアイルランドで発生する新規食中毒『アザスピロ酸中毒』の原因毒として単離・構造決定されたポリエーテル化合物である。この食中毒が初めて報告されてから13年にもなるが、未だにその食中毒の分子機構や貝の毒化の原因が解明されていない。この食中毒による被害は、現在では時期を問わず一年中見受けられるようになり、その範囲も遠く南のモロッコにまで広がっている。こうした社会不安から、合成化学的研究による検出法の確立、生物活性の正確な評価、構造活性相関、活性部位の特定、分子標的の同定などが求められている。本研究ではアザスピロ酸の全合成と、その抗体調製のためのハプテン開発を目的とした検討を進めた。まず、E環部に相当するアリルスズ化合物をマロン酸誘導体から16段階で合成する方法を確立した。FGHI環部に相当するC28-C40位セグメントの合成に際しては、化合物の不安定性などを考慮して検討を行い、環化の順序についてはHI環→FG環が収率と選択性の点で優れているという知見を得た。アミノ基の保護基についても環化の選択性に及ぼす影響などを調べ、プロピルカルバメートがHI環の形成および他の官能基との区別において満足できる結果を与えることを見出した。E環部およびFGHI環部セグメントのカップリング反応は、塩化インジウムをTHF中で作用させる穏和な方法によって極めて円滑に進行し、88%の収率で生成物を与えた。最後にFG環をシリル保護基を脱保護しながら形成させ、アザスピロ酸下半分の保護体の合成を達成した。この化合物からハプテンとなるアザスピロ酸の下半分の構造へと導くために、アミノ基保護基の除去を次に検討し、トリメチルシリルエチルカルバメート基がより優れていることを見出した。この保護基の除去はTBAFを用いることによってスムーズかつ好収率に進行したため、これを用いた下半分の合成を再び行うこととした。また、タンパク質に導入するためのリンカーの検討を行い、E環に対してアルキル鎖リンカーを直接導入する方法が良好な結果を与えたため、これらの方針に沿ったハプテン合成を進めているところである。多段階合成であるため、ハプテンの調製にまではあと数ケ月かかると予想されるが、主な問題点はすでにクリアしているため、目的は達成できる見込みである
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有機合成化学協会誌 66(印刷中)
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan 66
Organic Letters 8
ページ: 3943-3946
The Tohoku Journal of Agricultural Research 57
ページ: 59-65
Organic Letters 8(18)
The Tohoku Journal of Agricultural Research 57(1-2)
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