スーパーオキサイドは活性酸素の一つであり、生体内における免疫応答および組織損傷にかかわっており、健康な生体においてその存在量は「生成と分解」により適切に保たれている。生体のスーパーオキサイドの分析は、免疫力および組織損傷を知る一つの手段であり、スーパーオキサイドを化学反応を経て光情報に変換し分析する化学発光法がその高感度分析法の一つである。現在の化学発光分析では青色光あるいは緑色光を発する発光化合物(発光プローブ)が用いられている。これらの発光色は生体色素による光吸収のため光検出器に到達する光量は著しく低下し、測定の妨げとなっている。本研究では、発光波長が光透過性に優れる長波長域に有する発光化合物の開発を試みた。 スーパーオキサイドと反応しエネルギーを生成する分子を赤色蛍光を発する蛍光分子に化学結合させ、エネルギー移動を用いて赤色蛍光分子から光を発する機構を用いた。この発光分子を化学合成しスーパーオキサイド発生系を用いて発光能を評価したところ、スーパーオキサイドと反応しエネルギーを生成する分子からの発光は生じず赤色光のみの発光を確認し、さらにはこれまでの発光化合物よりも発光強度が高いことを確認した。この発光においてはエネルギー移動が効率的に生じていることが証明された。また、スーパーオキサイドと反応しエネルギーを生成する分子と赤色蛍光分子との結合様式が異なった発光化合物を数種化学合成しその発光強度を評価した結果、この結合様式は発光強度に著しく影響していることが判明した。
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