研究課題
基盤研究(C)
現在の機器分析技術の進歩には目を見張るものがある。生理活性天然有機化合物の構造は多種多様に富んでいるが、高度に発達したNMR技術により構造決定が半ばルーチン化していると言っても過言ではない。しかしながら立体構造の決定に関して、特に非環状系で4級炭素を含むような場合には、最新のNMR技術をもってしても依然として難しい問題となる場合が少なくない。このような場合には、やはり化学合成により可能な立体異性体を合成して絶対配置も含めた全立体構造を決定するのが有力な手段となりうる。また生理活性物質は一般に微量しか得られないことが多々あることから、化学合成法を開発することは、その後の作用機構の解明や構造活性相関研究に必要な誘導体をも含めた物質供給という観点からも重要であると思われる。本年度においては、高度に酸化された細胞毒性トリテルペンポリエーテル(オキサスクアレノイド)のうち、海洋産含臭素オキサスクアレノイドであるオーリロール、イントリカテトラオール、エンシュオールを取り上げ、分子サイエンスの出発点となる全立体構造決定についての問題を化学合成的手法を用いて解決することを第一の目的とした。その結果我々は、(+)-オーリロールの初めての全合成を達成するとともに、分光学的手法だけでは解明されていなかった立体構造決定についての問題を、合成化学的手法を用いて解決することに成功した。またBaldwin則に従わない閉環モード(6-endo-tet)で、ビスホモエポキシアルコールからテトラヒドロピラン環を位置選択的に構築する方法も新たに見い出した。これらの研究はオキサスクアレノイドの分子科学の発展に大きく貢献するであろう。
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