研究課題
本年度においては、我々が注目しているオキサスクアレノイド分子の中から、立体構造が未解明の海洋産含臭素トリテルペンポリエーテル化合物エンシュオールを中心にその効率的合成ルートの開発と全立体構造の決定を目指した。エンシュオールは、1995年に鈴木らにより紅藻Laurencia omaezakiana Masudaから単離された化合物である。構造解析はNMRを中心に行われ、平面構造、A環の絶対配置、C、D、E環内がtrans配置であることが報告されていた。しかし不斉4級炭素を含むC10-C11、C14-C15、C18-C19位間の相対配置については決定することができなかった。これは現在の立体構造決定におけるNMR技術の限界を示しており、他の手法によるこの問題の解決が切望されていた。当初鈴木らが生合成仮説から推定していた構造式の部分合成を行ったが、間違いであることが推測された。我々の研究室におけるこれまでのオキサスクアレノド分子合成蓄積データから未解明部分の相対配置はerythro、D、E-環内はcis配置であると予測し直し、その立体化学を有する分子を標的として全合成を行った。その結果、(+)-エンシュオールのはじめての不斉全合成を達成するとともに、その全立体構造を明らかにすることに成功した。このように分光学的手法では解決できない立体構造決定の問題を合成化学的手法により解決した。これらの研究はオキサスクアレノイドの分子科学において基盤をなすものであり、この研究分野の発展に大きく貢献するものと思われる。
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