研究概要 |
バンコマイシンの抗MRSA活性に見られるように、フェノール酸化によって生成されるジアリールエーテル構造はペプチド等の立体化学を固定して生物活性を発現する重要な因子である。この生合成反応をミミックするタリウム(III)塩による酸化法の改良を目指して研究を行った結果、反応系中でタリウム(1)から活性型III価への酸化法を開発することが出来た。さらに、これに固相法を組み合わせた結果、従来法に比べてはるかに安全なフェノール酸化の方法論確立することが出来た。ジアリールエーテルは2カ所の1電子酸化反応が組合わさったものであるため、これを活用してタリウム酸化試剤の触媒化に向けて研究を継続している。 植物由来のベルベナカルコンは,PC12D細胞の神経芽成長促進因子の活性化作用を示す。メトキシジアリールエーテル構造を特徴とするベルベナカルコン自体は、すでに報告者により有機電気化学的手法を鍵反応として化学合成に成功している。本研究では、関連する天然物の合成も含めて関連物質を合成し構造活性相関に関する研究を行い、天然物より強力な活性を見出すとともに天然物とは逆の阻害活性を有する化合物を創製した。 含臭素スピロイソキサゾール海洋天然物群は、様々な生物活性を示すことで知られている。本研究において、ジアステレオマー分離の手法により初めて光学的に純粋なアエロチオニン、アエロプリシニン-1の両鏡像体の合成に成功した。 種々の生物活性を示すマンゴスチンを基質としてキサントン骨格の変換と新規活性の創出を目的として陽極酸化反応を研究した。その結果、フェノールの酸化還元電位に依存して一連のジエノン型成績体が生成することを見出した。 本研究の過程において、新規な作用機序によるものと考えられる抗MRSA活性を示す化合物を見出すことが出来た。
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