研究では、3種類の放線菌由来C-配糖化抗生物質を取り上げ、その配糖化様式の機構解析を進めることを基盤としている。当該年度は、ベンゾイソクロマンキノン(BIQ)系medermycin(MED)の基本骨格形成に関わる以下の検討を行った。MEDはBIQ系抗生物質としてアクチノロジン(ACT)と共通の基本炭素骨格を有し、その配糖化の受容体(=アグリコン)としてその形成過程に興味がもたれる。本基本骨格形成には、炭素鎖伸張、閉環、立体化学制御など鍵となる過程が含まれているが、今回、炭素鎖伸張から立体特異的閉環に関わる還元酵素RED1について、酵素化学的解析を行った。pET21a vectorのT7プロモーター下流に目的酵素遺伝を挿入した発i現プラスミドで大腸菌BL21系株を形質転換しLB培地中で培養・抽出後、可溶性画分をNi-NTA column、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより電気泳動上単一バンドを与える酵素として精製した。本酵素は、ゲルろ過においてホモダイマーとして挙動することが明らかになった。また、本精製酵素液を用い、各種合成基質アナログとのin vitro反応を行った。酵素基質の消費速度並びに各種酵素学的kineticsパラメーターの測定結果から、RED1が認識する2環性中間体基質は、酵素タンパク結合型ではなくカルボン酸型である事が示唆された。この事からACTの生合成経路中においても、RED1が認識するのは酵素非結合型の2環性中間体であることが推察された。本知見は、BIQ配糖化の受容体構造の形成についての重要な知見である。 成果の内容については、第10回工業微生物遺伝学国際シンポジウム(プラハ)で発表し、米国化学会発刊専門誌に学術論文として投稿し、現在、審査中である。
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