研究概要 |
本研究では,3種類の放線菌由来C-配糖化抗生物質を取り上げ,その配糖化様式の機構解析を進めることを基盤としている。当該年度は,ベンゾイソクロマンキノン(BIQ)系抗生物質の基本骨格形成に関わる以下の検討を行った。BIQ系抗生物質アクチノロジン(ACR)生合成において,中間体と考えられるジヒドロカラタファンギンの6位の酸化はActVA-6が,8位の水酸化はActVA-5が触媒すると考えられてきたが,他のBIQ化合物グラナティシン,メダマシン(MED)の生合成遺伝子クラスターにはactVA-5の相同遺伝子があるのに対してactVA-6の相同遺伝子は存在しない。特にMEDの8位に水酸基がないことからActVA-5,6の機能に疑問が生じた。そこで,新たにactVA-5,6の遺伝子破壊体を作成し,菌体培養後の表現型や液体培養後の代謝産物のプロフィール解析からin vivoでの両酵素の機能を検討した。actVA-6単独の破壊体は野生株とほぼ同様の表現型を示し,ActVA-6のACT生合成への寄与は,少なくともin vivoではわずかであることが示唆された。一方,翻訳共役しているactVA-5,6を併せて破壊した菌体はACTの代わりに黄色色素を生産し,新規shunt productであるアクチノベリロンと構造決定した。この構造からAct-VA5のC-6酸化へ関与されること,C-3,C-15の還元反応が6位酸化の直前に生じることも示唆された。C-配糖化の受容体アグリコンの骨格形成に関して重要な知見を得たと考えている。今回の成果の内容については,昨年度の成果とともに国際学術雑誌にて発表した。
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