研究概要 |
我々がこれまでに独創的な方法で確立してきた天然資源からの抗アレルギープロモーター物質探索を目的とするin vivoアッセイ法は、1回のHEL感作後、抗原特異的なアレルギーの開始(プロモーション)段階で、静脈微小循環の血流量が、血圧の関与無しに顕著に低下する現象を応用したものである。この血流量低下には,NO, COX-1、2およびPGI_2が関与することを前回の科研費で明らかにしている。本研究ではさらに詳細なメカニズムを確定し、作製したアッセイ法を用いて、新規抗アレルギープロモター物質の探索を目的とした。 本年度の実績としては、血流量低下にはWestern Blotting法によりeNOS由来のNOが関与することを明らかにした。さらにiNOSノックアウトマウスを用いた実験により、血流量低下にはTXA_2とET-1の関与するiNOS非依存性経路とCOX-1,COX-2,PGI_2の関与するiNOS依存性経路の2種類が関与することを明らかにした。これらの知見と、前回明らかにした知見を総合し、HEL感作による血流量低下には、血管内皮細胞や血小板、好中球、マクロファージなどが関与し、その結果COX-1、COX-2、PGI_2、TXA_2、ET-1、顆粒球エラスターゼおよびNOが関連しあって複雑な過程で生じたと推測した。また、この過程の後半に寄与するiNOSやCOXは必須でなく,むしろ重篤化に働くと考えられた。 さらに上記アッセイ法を用いて,ヤマナラシ,キンギンカおよびキサントレアに血流量低下の改善効果を明らかにし,アレルギー予防薬としてのシーズを見出した。さらにその成分として,ヤマナラシからは,新規化合物フェノール性化合物siebolsides AおよびBを含む5種の化合物を、キンギンカからは、クロロゲン酸および3種の既知イリドイド配糖体を、キサントレアからは3種の新規フラバノンまたはカルコンを含む12種の化合物をそれぞれ単離し、各化合物の血流量改善効果を明らかにした。
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