本年度の研究計画に従い、以下に挙げる項目に関して研究を行った。 1.官能基非依存型低分子アレイを用いた解析 平成17年度に引き続き、マイクロアレイ基板上に導入したトリフルオロメチルアリールジアジリン(TFMAD基)の光分解により生じるカルベンを用いて低分子アレイを作成し、各種タンパク質のリガンド探索を行った。 2.低分子化合物1分子中の複数の官能基に対するカルベンの反応性の評価 平成17年度までに、(1)溶液状態の低分子化合物(低分子量アルコール)に対してTFMAD基由来のカルベン種がC-HおよびO-H挿入反応生成物を与えること、(2)溶液状態の反応ではO-H挿入生成物の割合がほぼ70%以上を占めるが、固体状態に冷却すると、C-H挿入生成物の割合が劇的に増加すること、の2点を見出していたが、今年度は液体クロマトグラフィー連結型タンデム質量分析計(LC-MS/MSおよびLC-MS/MS/MS)による反応生成物のフラグメンテーションパターン解析をフルに活用して、カルベンと様々な低分子量アルコールとの反応生成物の構造解析を行った。その結果、上記(2)の結果をサポートすると共に、生成した構造異性体の構造のより詳細な解析と定量ができた。 3.官能基非依存型固定化法のアフィニティービーズ調製への応用 特異な生理活性を有する化合物のうち、カルベン種を発生させるために必要な紫外線量を照射しても分解の起こらない化合物を選択した。これらの化合物のアフィニティービーズを作成し、結合タンパク質を探索した結果、いくつかの低分子-結合タンパク質のペアを得た。
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