研究概要 |
根培養系を用いたトランスクリプトームと免疫化学的手法との複合による植物代謝研究を目的として研究を実施している。 マメ科植物ウラルカンゾウGlycyrrhiza uralensisは、トリテルペノイド配糖体であるグリチルリチンを根、およびストロンに蓄積している。ウラルカンゾウのストロンから調製した完全長cDNAライブラリーをもとに解析した計56,000ESTから、計36種のP450をコードしていると考えられるcDNAクローンを抽出した。また、グリチルリチン生合成の初発物質と考えられるβ-アミリンを産生する酵素(bAS)cDNAをクローニングした。次に、ストロン、根、培養ストロン、葉、茎などにおける遺伝子発現様式がbASと類似であり、かつBLASTサーチによって機能未知であるP450分子種を絞り込んだ。次にこれらの絞り込んだP450をバキュロウイルス発現系により発現させ、未来ローム画分を調製し、さまざまなトリテルペン中間体を基質とした変換活性を調べた。その結果、絞り込んだP450のうちの一つが、新規なトリテルペン酸化反応を触媒することを見出した。さらに、ウラルカンゾウ培養ストロンを材料として、GFP、bASなどが発現する毛状根を作成した。これらの毛状根、あるいは圃場の根などを用いて、抗グリチルリチン抗体によるEastern blottingが可能であることを見出し、本法による代謝物の簡便なスクリーニングが可能であることがわかった。 以上のようにトランスクリプトームと免疫化学的手法との複合により、トリテルペンの新規酸化酵素遺伝子を発見するとともに、代謝産物ベースのスクリーニングが可能となり、当初の研究目的を達成することができた。
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