研究概要 |
1.トリカブト毒 前年度採取したトリカブトから、トリカブトの猛毒成分アルカロイドアコニチン類6種を全て得ることができ、またこれらの一次代謝物(8-ヒドロキシ体)6種及び最終代謝物(8,14-ヒドロキシ体)4種を全て合成した。さらに定量用内部標準物質として、8-アルコキシアコニチン類数種、及び現在最も定量精度が高いとされる重水素化アコニチン類も併せて合成した。以上の化合物を用いて、市販の逆相及び順相系固相抽出カートリッジによる固相抽出を検討したところ、Oasis HLBを用いた場合のみ全化合物を血液や尿等の生体試料から容易に高回収率で抽出可能であることを明らかにした。上記固相抽出法と平行して、LC-ESI-MS/MSによる高感度一斉微量分析法を検討したところ、広く安価に普及しているODSカラムを用いて全成分を分離することができた。内部標準物質としては、重水素化アコニチン類が最も高い分析精度を示したが、より容易に得られるブトキシアコニチンも実用上十分な精度を示した。以上を組み合わせたトリカブト毒分析法により、生体試料より迅速かつ容易にトリカブト毒及びその代謝物を検出・同定・定量することが可能となった。各成分の検出下限はng/mLオーダー以下であった。 2.バイケイソウ毒 前年度採取したコバイケイソウの幼若株〜成熟株より、幼若〜成熟バイケイソウ毒、すなわち催奇形性幼若ステロイドアルカロイド4種、猛毒かつ催奇形性を有するC-nor-D-homo-ステロイドアルカロイドジャービン類4種、さらに猛毒エステル型アルカロイド5種を得た。これらについて、トリカブト毒同様の固相抽出-ODS-LC-ESI-MS/MS分析法を用いて、生体試料から全成分を分離検出・定量できることを明らかにした。内部標準物質はメチルリカコニチンが最も適切であった。また前年度取得した植物粉砕粉末化装置を用いて粉砕した植物試料からも、同様に容易にバイケイソウ毒を容易に検出・同定・定量することができた。各成分の検出下限はng/mLオーダーであった。 3.アセビ毒 古来より有毒植物として知られるアセビの毒もまた、分析の困難なテルペノイド系神経毒である。この度アセビ毒を経口服毒した事例において、服毒したアセビについて、前年度確立した植物粉砕粉末化装置による植物粉砕条件を適用してアセビ毒を検出定量することができ、また世界で初めてヒト胃内容からアセビ毒を検出・定量し、ヒト胃液中におけるアセビ毒の変化及び強毒化の様子を明らかにした。
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