研究概要 |
砂丘湖は新潟県,青森県に主なものがそれぞれ約10湖沼が分布するとされ、成因的に極めて貴重な湖沼である。研究初年度は各分担者の参加のもとにそれぞれの県に分布する砂丘湖の現状の把握に重点をおいた調査を夏季,秋季同時期に及び随時行った.新潟県においては21湖沼,青森県においては23湖沼及び湧水源が露出している場合には湧水について,水質(水温,pH,EC,栄養塩,クロロフイル)の測定を行い,動物プランクトン,植物プランクトン,水生植物,水生動物,安定同位体分析用試料の採集を行った.また,成因,利用形態についても調査した.研究集会を2月末に新潟で行い,今年度の調査報告後,湿地保全の討論,来年度計画について議論した. その結果,1新潟平野の砂丘湖は横列砂丘列に頚城湖沼群と屏風山湖沼群は縦列砂丘列に位置し,特に青森にはこれまでの記載よりも多くの砂丘湖が分布すること,2湧水のECは湖水に比較して高い場合が多く,硝酸態窒素の濃度が高いこと,3クロロフイル-a濃度は新潟の砂丘湖で高く,夏季50μg/lを越す5湖沼があり、アオオも発生しており富栄養化が進行していること,4青森の砂丘湖では底泥の浚渫により,水生植物が壊滅的な影響をうけ,自然状態で残存しているのは冷水沼はじめ2,3湖沼であることから緊急の保全対策が必要であること,5新潟の砂丘湖では溜池や公園として利用されている場合が多く,湖岸化が進行しており,良好な自然湖岸を残す対策が必要であること,6水生植物では,新潟ではオニバス,ガガブタ,ミズアオイ,アサザ,ハンゲショウ,サンショウモなど,青森ではマルバオモダカ、アギナシ、エゾノミズタデ,タチモ、ミクリ、ヒメミクリ、オオトリゲモ、ヒメタヌキモ、タチモなどの環境省・自治体指定の希少種の残存が確認されたこと,7青森では16種の希少動物の存在などの現状が明らかとなった.現在他の採集試料の分析を継続している.本現状調査から,青森県では冷水沼,新潟では佐潟を代表的な砂丘湖として抽出することが出来,来年度はさらに全体的な現状調査を継続する中で,集中的に水文・水質・生物・緒環境の調査を行うこととした.
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