研究概要 |
日本における主な砂丘湖は新潟県,青森県で約20湖沼が分布するとされているが,前年度の調査により約45湖沼あまりを調査対象湖沼として選定できた.これらについて,水質,地形,水生生物の現状調査を進めると共に,さらにこれまで全く陸水調査報告のない下北砂丘湖沼群について予備的な調査行を行い,次年度調査の情報を得た.また.それぞれの県の抽出湖沼について集中的な調査を開始した.分担者・協力者による研究集会は青森県砂丘湖の現地調査を兼ねて行い,特に砂取りによる改変の現状について今後の調査法を検討した. その結果1.両県の砂丘湖群の春季における水質・生物の現状調査を同時期に行い四季の一斉調査を終えた.特に新潟砂丘湖では春季にもすでに湧水のECが高く(最高40mS/m)、湖水のクロロフィルa-濃度が150μg/Lを超える湖沼(弁天潟)もあり,富栄養化傾向が明らかとなった.2.屏風山湖沼群では17湖沼の沿岸から計43分類群の動物プランクトン,16の砂丘湖から10門にわたる計21科の水生昆虫類が確認され,水生植物との関係が重要となる結果を得た.3.砂丘湖の地形・地質調査では基盤をなす,最終氷期の泥炭層である館岡層の堆積年代を明らかにし,最終氷期中に調査地域において水域が広がっていた年代を検討した.4.湧水生物の食物連鎖を明らかにする同位体分析では優占種のプラナリアがヨコエビを捕食する可能性を表わす予備的な結果を得,本格的な検討のための試料を採取した.また,水動態解析の同位体試料を得た.5.貴重種調査では特にガガブタ(II類)の分布と花型の調査から,適法受粉は天ヶ池のみでしか起こらないことを明らかにした.3湖沼でのみアサザ(II類)が分布した.6.冷水沼,佐潟を抽出湖沼として選び,定期調査を開始した.佐潟周辺の74地点の湧水調査では約35%の地点で硝酸態窒素が10.mg/lを超えることが明らかとなった.7.砂丘湖の改変状況の調査では,過去の地形との比較のための資料を得,また生物調査で湖底は無酸素化し無生物帯となっていることが示され,今後の大きな課題となる.8.未知の調査地,下北半島の砂丘湖の予備調査では海跡種とされるイサザアミが確認されるなど,来年度の調査が期待される.
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