研究概要 |
今年度の補充調査を加え,新潟県26湖沼、青森県39湖沼、全65湖沼についての現状を明らかにした.これまでほとんど調査の行われてこなかった下北湖沼群7湖沼について貴重な結果をえた.また抽出湖沼である新潟県の佐潟においては湧水及び湖水の季節変化の調査を行った.今年度の主な結果は,1.下北湖沼群における調査においては,(1)ECは10.7-36.5(mS/m)で低く、クロロフィルa濃度も8-20(μg/1)で貧栄養的であること、(2)屏風山湖沼群の水生動物相と比較していくつかの動物群で生態的位置の等しい種の置き換わりがあること、(3)6湖沼の水生植物の調査でイトモなど12種のレッドリスト種を含む38種の水生植物が確認され、良好な環境が維持されていることが判明した.2.砂丘湖の成因として屏風山砂丘地帯では海成段丘面を被覆する黒ボク土が不透水層として重要であること、猿ケ森砂丘地帯においては海成段丘面を刻む谷が砂丘の形成により閉塞された海跡湖である可能性が高いことが指摘された.3 佐潟周辺湧水10地点の水質調査においては,季節的に成分の安定した湧水,夏季における成分が低濃度の湧水,逆に夏季に高濃度となる湧水,濃度変動の激しい湧水など地下水脈の相違を示唆する結果を得た.4 佐潟湖内水質の季節変化では特に夏季の総窒素濃度が2mg/1前後であるのに対し,硝酸態窒素濃度が極めて低くなり,周辺湧水から流入する硝酸のほとんどが植物プランクトンの増殖に利用されていることが明らかとなった.5 2007年度の特徴として,春.秋・冬のクロロフィルa濃度が高い(250μg/1)が,夏に低い(100μg/.1)というアオコの発生を見ない例年にない変化を明らかにした.6 代表的な湧水生物であるヨコエビ,プラナリア、餌の可能性のある落葉,鉄酸化物の5地点における窒素・炭素安定同位体分析では,プラナリアによるヨコエビの捕食が推定されたが,落葉類の摂食の可能性が高くないことが明らかとなった。 砂丘湖における水資源の確保,良好な水質の確保,生物多様性保全,貴重動植物種の保全のため,砂丘における砂採取の制限や砂採取目的の湖内浚渫の制限,環境保全型周辺農業の推進,自然湖岸の維持・保全,ヨシ帯などの水生植物帯の維持・保全などの策が急務である.
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