研究概要 |
砂丘湖は砂丘列の間に湛水する,成因的に珍しい湖沼とされ,新潟県,青森県で約20湖沼が分布するとされていた.砂丘湖の生物多様性は高く,貴重な動植物が分布すると推定されるが、現状が不明な中で,砂採取等や湖岸改修等が行われているため,緊急の課題として砂丘湖と生物相の現状の調査を行い,以下の結果を得た. 1.新潟県26湖沼,青森県39湖沼,計65の砂丘湖について調査を行った.特に下北湖沼群のまとまった調査は初回である.2.底生無脊椎動物では新潟から5門173分類群,青森屏風山湖沼群から,8門196分類群,下北湖沼群からは5門135分類群をリストした.3.動物の貴重種として新潟のオオセスジイトトンボなど10種,青森のヒダリマキモノアラガイなど12種の分布が明らかとなった.4.水生植物では新潟でオニバスなど貴重種43種(含湿地性),屏風山からマルバオモダカなど10種,下北からイトイバラモなど12種の分布が明らかとなった.屏風山周辺植物では計536種を確認した.タコノアシなど分布上重要な20種について特に述べた.5.陸水学的には、新潟の砂丘湖は周辺農業の影響を地下水が受け、富栄養化している湖沼が多かった.湧水中の窒素の濃度を下げるヨシ帯の重要性が明らかとなった。6.青森では,植物プランクトンのブルームの出る湖沼は限られていたが、今後の注意が必要である.7.水中植生が豊富な湖沼で多様性が高まる傾向が水生貧毛類などでみられ動物群集の多様性の維持には水中植生の保全が欠かせないことが明らかになった.8.砂丘列及び砂丘湖の形成過程については,青森県屏風山砂丘を中心に第四紀の地形・地質に関する資料および現地調査をもとに湖沼の成立要因を検討した. 9.本調査で,貴重種を含む砂丘湖の生物多様性の豊かさが明らかとなったが,湖岸のコンクリート化,大規模な砂採取,浚渫による改変が進み水生生物に大きな影響を及ぼすことが懸念され,緊急の対策を提言した.
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