研究課題
平成19年度は、カメ目に特徴的な現象である胚の固着や卵殻の白濁に着目して、アカウミガメの胚発生の進行状況について調査し、さらに飼育下個体の産卵生理についても内分泌学的に検討した。本研究には、和歌山県日高郡みなべ町千里の浜で採取した野生アカウミガメの受精卵60個と、姫路市立水族館のアカウミガメ3頭を用いて行った。転卵実験の結果、対照区と転卵区すべてにおいて卵の頂点から固着と白濁が進行した。また、孵卵64〜68日目で孵化が起こったが、孵化率は、対照区80%、産卵8時間後転卵区70%であったのに対し、12時間後転卵区では30%という差が生じた。産卵後8時間を経過した卵の移植では、発生に及ぼす影響は少ないことが分かった。これらのことから、アカウミガメの受精卵において移植時に生じる胚発生の停止は、産卵後12時間以上経過した卵において起こる現象であると考えられた。砂中温度は、千里の浜で平均30.9℃、恒温器では平均28.2℃となり、湿度は両方共にほぼ100%であった。それらの環境下で孵化させた結果、孵化日数は千里の浜で59日間、恒温器では64日間となった。これらの積算温度を計算すると、千里の浜では1823℃であったのに対し、恒温器では1804℃と算出されたことから、積算温度が1800℃を超えると孵化に至るのではないかと推察された。飼育下個体における2006〜2007年の血中性ステロイドホルモン濃度を測定した結果、雌2頭共にそれ以前と比べエストラジオール-17β濃度が常に低い値で推移し、同様に雄のテストステロン濃度も常に低い値で推移した。雄雌ともに血中性ステロイドホルモンの有意な変動が認められなかった。
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