沿岸域生態系の生物多様性を維持する上で様々な規模の攪乱が果たしている役割を明らかにするために、野外でおこる様々なタイプの基質攪乱の頻度と強度及びその影響範囲を定量化するとともに、攪乱による底生生物群集の変化とその回復の過程を追跡した。南九州の沿岸生態系から、岩礁潮間帯、転石帯、干潟をそれぞれ5、6海岸ずつ選び、以下の調査を行った。 1)環境調査:基質が受ける攪乱の程度を把握するため、各ハビタットにおいて、波圧、基質上の微細構造、転石の不安定さ、粒度組成、水温、塩分濃度等を計測した。また、上記3タイプのハビタットにおいて、本年9月に上陸した台風14号による撹乱の程度を調べたところ、干潟では地形が大幅に変化しており、岩礁潮間帯でも基質が大きな撹乱を受けている可能性が示唆された。 2)生物調査:各調査地で5月に底生生物を採集し、攪乱前の底生生物相の種名リストを作成した。上記の撹乱による影響を知るため、岩礁潮間帯及び干潟については10月にも調査を行った。その結果、どちらのハビタットについても底生生物の種組成に大きな変化は見られなかった。一部の海岸では定量的な調査を行ったが、総現存量についても撹乱の前後で大きな変動は見られず、特定の種の定量的な変化を現在解析中である。 3)文献・データベース調査:時空間的により大きなスケールで、環境攪乱の頻度とその影響をとらえるため、公開されている文献やデータベースから、気象情報や地形情報を収集するとともに、GISソフトへの変換を開始した。
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