研究課題
現在、世界各地に居住している民族的マイノリティ・グループである「ロマ」と「ユダヤ人」について、他者(非ロマ、非ユダヤ人)との関わりの歴史と現状の調査を主としてチェコに関して実施した。現地調査においては、関連文献の収集の他、ロマ系のNGO(アティンガノイ)、チェコ系のNGO(多文化センター、「新しい学校」)、国際NGO(オープン・ソサエティ・ファンドなど)のチェコ事務所などでヒアリングを行った。10年以上の活動実績を持つNGOも多く、最も成果をあげている分野は、ロマ系児童の就学前教育や補習に関するものである。ロマに比べて、ユダヤ人は数が少なく、また必ずしも援助を必要としているわけではないので、チェコ系団体で直接ユダヤ人関連の事業を行うところは少なく、むしろユダヤ人自身が自助的に自らの宗教・文化を維持し、権利拡大を求める活動をしているようである。また、第二次世界大戦中にホロコーストを体験した民族同士として、ユダヤ系団体が、ロマに関する展覧会、出版活動も行っている。文化面に関しては、プラハ最後のドイツ語作家として知られるレンカ・ライネロヴァーの著作を収集し、彼女の著作を通じ、ユダヤ人アイデンティティと多数派との関わりを検討中である。また、ユダヤ系のクレズマ音楽とハンガリー系ロマの「ジプシー音楽」には旋律や楽団編成に類似性がみられるが、これは、両者の音楽家達が、それぞれ地理的に近い地域を移動しながら、多数派の人々の祝祭のために演奏したという事情によるのかもしれない。なお、これまでご助言いただいていたチェコのロマ研究者ミレナ・ヒュプシュマノヴァー氏が、2005年9月、不慮の死を遂げられ、今後はそれがかなわなくなった。
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東欧の20世紀(高橋秀寿、西成彦編)(人文書院)
ページ: 126-156
Problematika vysokoskolskeho vzdelavani pracovniku cestovniho ruchu v Evropske unii na pocatku tretiho tisicileti, Praha : VSO (印刷中)