現在、世界各地に居住している民族的マイノリティ・グルーブである「ロマ」と「ユダヤ人」は、マジョリティ社会から阻害され、現在に至るまで独自の文化と民族意識を持っていることに共通性がある。また、第二次世界大戦期に、共にナチ・ドイツの人種政策の犠牲になっていることでも知られる。 また、新たに確認された共通性として、両者とも他者から自らの民族を意識させられることが多いことがあげられる。存命のプラハ最後のドイツ語作家として知られるレンカ・ライネロヴァーも、自らがユダヤ系であると意識したのは、ナチスが反ユダヤ政策を始めてからであった。チェコスロヴァキアの代表的ロマ作家であったイロナ・ラツコヴァーも、幼少期から接したスロヴァキア人との関わりで、自らのロマ性を意識し、それを育むようになった。 このように共通性も見られるが、現在はイスラエルという自らの国を持ち、世界的な有力者(政治家、経済人、文化人)などを多く持つユダヤ人と、そうでないロマでは、生活水準・民族意識のあり方にも大きな違いが出てきている。 特に生活水準という点では、スロヴァキアにおけるロマの集落や、チェコにおけるロマの多く住む地区は、明らかに貧困に苦しんでいることがわかることが多い。これらの改善には、彼らの教育水準の改善が重要で、公的・私的な就学前教育などがチェコやスロヴァキアで実施されている。また、小学校段階におけるロマ系助手をクラスに配置することも、ロマ系児童の多い学校では実現している。助手は、一般児童の援助も行うので、クラス全体の学力・生活力向上にも役立っていると思われる。 ユダヤ系については、チェコ・スロヴァキア共、第二次世界大戦後の住民が少ないため、教育の多くは、マジョリティに統合されているが、プラハなどでは、ユダヤ系私立学校も存在する。今後は、民族性の維持が課題になってくるかもしれない。
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