研究課題
基盤研究(C)
現在世界各地に居住している民族的マイノリティ・グループに「ロマ」と「ユダヤ人」がいる。その両グループには、1.共にナチ・ドイヅに迫害され、強制収容所で虐殺されたこと、2.彼らに対する迫害・差別に長い歴史があること、3.マジョリティ・グループとの長期間の接触にもかかわらずマイノリティとしての独自文化を維持し続けていること、などの共通性がある。他方、1.「ユダヤ人」は、現在イスラエルという国家を形成しているが、「ロマ」は国家を形成していないばかりか、国家形成をめざす動きも歴史的にみてほぼ皆無といってよいこと、2.「ユダヤ人」は、政治・経済・文化など様々な分野で世界的な著名人を輩出しているが、「ロマ」ではそのような人物が稀なこと、などの相違点もある。中欧においては、両民族とも中世以来、マジョリティの歴史の中に様々な足跡を残してきた。「アウトサイダー」として、「犯罪者である」というレッテル貼りに基づく迫害の記録も多い。また、両民族とも、その集団への帰属は、自己規定による場合ばかりでなく、他からのレッテル貼りにより決めつけられたり、自ら意識させられたりする場合もあった。存命のプラハ最後のドイツ語作家として知られるレンカ・ライネロヴァーも、自らがユダヤ系であると意識したのは、ナチスが反ユダヤ政策を始めてからであった。チェコスロヴァキアの代表的ロマ作家であったイロナ・ラッコヴァーも、幼少期から接したスロヴァキア人との関わりで、自らのロマ性を意識し、それを育むようになった。現在チェコ共和国においては、両民族は、それぞれ自らの文化を記録し、紹介する博物館や、教育機関として独自の学校を持っている。民族的マイノリティとしての活動の歴史の浅いロマが、ユダヤ人の長い活動をモデルにできる可能性もある。
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エスニック・アイデンティティの研究-流転するスロヴァキアの民(川崎嘉元編)(中央大学出版部)
ページ: 123-143
世界史の研究 2007-5(印刷中)
Yoshimoto KAWASAKI (ed.), A Study of Ethnic Identities・ Changing Slovak People, Chuo-University. Press
Study of World History 2007-5(in printing)
東欧の20世紀(高橋秀寿、西成彦編)(人文書院)
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Problematika vysokoskolskeho vzdelavani pracovniku cestovniho ruchu v Evropske unii na pocatku tretiho tisicileti, Praha : VSO
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Hidetoshi, TAKAHASHI & NISHI Masahiko (eds.), 20th Century in Eastern Europe, Jimbunshoin
Education in the Field of Tourism in EU Countries at the Beginning of the 3rd Millenium, Praha : VSO