研究課題
基盤研究(C)
近代国家の周縁に取り込まれた辺境の意味を、外の世界へのインターフェイスとして捉えようとする共通の問題意識に基づき、三名はそれぞれのフィールドで以下のような研究を行なった。川名は、分割前のポーランド国家においてユダヤ人がポーランド社会内部の「理念的辺境」として地歩を固めていった過程を、「ユダヤ人特権」の変遷の歴史の中に見て、それを資料的に精査した。また同じ視点をポーランド内の諸民族および諸宗派にも広げ、共生空間としてのポーランド国家の内部に存在する諸要素が、国家の有機的成分でありつつ、同時に学問、通商、信仰など様々な経路を通じて外部世界とのインターフェイスの役割を担っていたことを確認した。田村は、イスラーム地域とヨーロッパ地域におけるユダヤ教徒/人の存在様式とを比較した。とりわけイスラーム世界の中のユダヤ教徒の聖人信仰と、イスラーム教徒の聖人信仰の祭礼構造が相互浸透している様態に着目していたが、イタリア各地のユダヤ教徒共同体の調査および地中海をシチリアの聖人信仰を調査し、キリスト教社会でもこの祭礼構造が共有されていることを見出した。文明の境界空間におけるこれらの混成的様相は、異文化境界における断層構造ではなく、相互浸透的なインターフェイス的構造を示唆していると思われる。内田はフランス東部の国境地域がスイス側の中核都市ジュネーヴとバーゼルの凝集力によってこれらと国境を越える経済関係をもちえた事情を解明した。まずジュネーヴに接するジェクスとオート・サヴォワでは越境の経済活動を常態として許すフリー・ゾーンという特殊な制度が残存し、高い関税障壁の時代にもスイスとの自由貿易を享受していた点を実証した。次に北方の国境においては、スイス人が地代や十分の一税徴収権を通じてアルザスと有機的な経済関係をきずきあげてきたことを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (8件)
スラブ・ユーラシア学の構築(研究報告集) 第12号
ページ: 124-131
講座・世界の先住民族 第4巻
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成蹊大学経済学部論集 第37巻第1号
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The Journal of the Faculty of Economics Seikei University Vol.37, No.1
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東京国際大学論叢経済学部編 第33巻
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