1.本研究は、南米南部地域を対象に(1)輸送およびエネルギー部門における多国間のインフラ統合の動向を調査し、(2)物流等を調べることで「市場統合」と「インフラ統合」の相互促進性を解明すること、および(3)今世紀に入りラテンアメリカ地域で注目され始めた「地域公共財」の視点が地域統合の観点にどのような意味をもつかを解明することを目的としている。 2.18年度はまず同地域の関税同盟である「メルコスール」(南米南部共同市場。正加盟国:ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、準加盟国:チリ、ボリビア)が、南米北部のベネズエラの新規加盟およびボリビア、チリ、ブラジルを含む南米諸国の相次ぐ大統領選挙を背景に政治性を強め、市場統合体としての性格を急速に変容する過程のフォローアップに追われた。政治ブロック化は一過性の現象とみられるが、政治性を強める中で従来想定されてきた「市場統合」の深化および「インフラ統合」の流れが一時的にしろ中断した点は否めない。こうした状況変化の下、同地域にとり「市場統合」と「インフラ統合」がもつ意味を改めて検討、経済統合体としての深化の過程に復帰する諸条件を考察した。 3.上記の考察と合わせ、初年度に事例として取り上げた天然ガスの需給関係とその輸送手段であるパイプラインを使ったインフラ統合の進展をフォローした。政治ブロック化とも絡み、従来の各国間にみられた需給関係のひずみをベースとした天然ガスのインフラ・ネットワークが政治性を持ち、ボリビアおよびベネズエラが主張する「資源ナショナリズム」を軸に新たな域内各国間の関係性を模索する過程を整理する作業を行った。 4.18年度の事例研究として、ブラジルと隣接国であるアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイとの間にみられるインランド・ポートの実態を調査し、輸送インフラ面から統合の実態を調査・考察した。 5.地域公共財の論点整理を行った。
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