今年度の研究は、公共政策における政策ネットワークという視点から、日本と韓国のDV防止法制定過程をとりあげ、女性NGOなどの市民的なネットワークが法制定にどこまで、どのように関与したか、関与するNGOの性格はどういうものか、政策形成の場における政府とNGOの距離はどのようなものか、などについて考察し、日韓の共通性と差異を析出する目的で取り組んだ。 2005年度前半は韓国の市民運動・女性運動にかんする文献・資料の収集と分析を行い、2004年に準備段階として韓国と日本で行った関係者インタビュー調査と合わせて、6月にソウルで口頭発表を行った。(日韓国際ワークショップ報告「DV防止法制定過程-日本・韓国の比較」於ソウル韓国労働研究院) さらに2005年11月にはキム・ウンギョン(韓国女性開発院教授)、シン・ヘス(性暴力相談所所長)、パク・ドンヒョク(女性家族部事務官)、キム・ゼヨップ(延世大学教授)、ジ・ウンヒ(元女性部長官)、イ・ミギョン(国会議員)(書面インタビュー)、原ひろ子(放送大学教授・インタビュー当時)にインタビューを行い、DV防止法制定過程に関する文献・資料調査も合わせて行った。2006年2月に山口市に於いて得られた知見の中間報告を口頭発表の形で行った。(日韓国際ワークショップ報告「ドメスティック・バイオレンス防止法制定過程における政策ネットワーク-日韓比較の試み」於山口県婦人文化教育会館) 両国とも法制定過程には女性NGOや現場の救済組織が深く関与しているが、NGOの性格と戦略、政府との距離・関係などは両国で大きく違っており、その背後には政体の違い、民主化を市民の手で実現した政治的な経緯の違い、経済発展の速度の違いなどがあることがわかった。
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