計画年度中間年度の18年度は、研究テーマ「フェミニニティと現象学的身体論批判」について、初年度におけるフェミニズム理論からの考察に対して、哲学・倫理学の側からの、身体・女性・パターナリズム・ケア倫理・家族・親密圏のキーワードを立て、「弱いパターナリズムとしてのケア倫理」の主題で研究を進めた。他方、ジェンダー・バックラッシユへのフェミニズム側からの理論的対抗として、ジェンダー概念の分析概念としての射程と手法について捉え返す研究に関しても、発言刊行の機会を得た。 秋以降は、内地研究先の東大教育学部教育研究科・川本隆史研究室の院生ゼミに参加。編著書『ファミリー・トラブル近代家族/ジェンダーのゆくえ』をテキストとして、上記課題の「弱いパターナリズムとしてのケア倫理」の議論を、「家族にとっての第三項」のテーマにつないで議論し考察を深めた。 若手研究者を巻き込んだ「身体とジェンダー」研究会も、会を重ね、ようやく、刊行企画の具体化に向かいつつある。編著者としてのかかわりを果たしつつ、本研究課題の一部を本企画に反映した。 また、近刊予定の『女性学/ジェンダー研究の現在』にも、本研究の成果は反映されている。 国外研究は、前年度の大連大学ジェンダー研究センターでのシンポジウム報告に引き続き今年度も中国農村部の女性と家族の状況視察のスタディ・ツアーに参加、北京師範大学でのシンジウムに参加、婦女連視察も行い、近代化・市場化への急展開の中での中国女性たちの「主婦化」、高齢化社会の状況をつぶさに見る機会を得た。内地研究がとれたこともあり、最終年度のまとめらに向けての一定の基盤づくりはなしえたかと思える。
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