研究概要 |
日本でのフェミニズム研究と宗教研究の関係の進展を課題としてきた本研究では、「欧米中心的物の見方」への批判的問い直しをするとともに,複数形フェミニズムのなかで,非西欧女性の宗教経験を,家父長制の因果関係や弱者の戦略ではなく,新しい視野でとらえなおす試みをしてきた。 「宗教と社会」学会において2年続けて,テーマセッションを企画、実行してきた。本年度は,テーマセッション「仏教ルネッサンスの向こう側-ラディカルな現代仏教批判」を企画し,4月に研究会を開いてその準備をし,「宗教と社会」学会第15回学術大会で,川橋(発表、司会者)熊本(発表、司会者)が加わって実施した。 また,研究代表者の川橋は国際宗教学宗教史会議の女性委員会運営委員をつとめ,この会議における女性研究者ネットワーク立ち上げに協力した。今後,このネットワークを通して,各国の研究者と積極的に情報交換を行い,国際的な研究者ネットワークの確立を行うと同時に日本の女性宗教研究者の開拓を行う予定である。 本年度の情報収集のための旅行としては,黒木が,ギリシャ・メテオラに出かけ,小松がアイルランドに出かけ,それぞれ修道院と尼僧の歴史的研究資料を,女神信仰の具体的な資料を収集してきた。 今後も,性別にかかわる差別と権力構造を明示し社会変革の挺子になる力を生み出す批判的概念としてのジェンダーの視点を,社会の中の性差にまつわる非対称性をあきらかにするものとしてとらえ,人間の平等な尊厳と解放を目指す宗教という事象の研究に当てはめていくことを,我々のさらなる課題と考えている。(660文字)
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