初年度にあたる平成17年度においては以下のとおり研究が遂行された。 (1)基本文献の蒐集:研究の全体的な見取り図を作成する為に、生殖や母性、医療についての文献が収集された。また大宅壮一文庫雑誌記事検索CD-ROMが購入された。 (2)データベース化:国立国会図書館の雑誌記事検索システムを利用し、戦後の日本において発表された高年初産、高齢出産についての論文のデータベース化が進められた。またその主要なものを複写した。 (3)聞き取り調査:高年初産を経験した女性6名に対して聞き取り調査をおこなった。この内容はテープレコーダに収められ、トランスプリクトが作成された。このデータを参考にして来年度以降、より多くの情報提供者を対象に聞き取り調査をおこなう予定である。 これらの作業によるまとまった分析は今後すすめられる予定であるが、そのいくつかを先取りして言うならば以下のことがいえる。まず、「高年初産」をひとくくりにすることはできず、論者や経験者の実感から鑑みて35-39歳を「前期高年初産婦」、40歳以上を「後期高年初産婦」と呼ぶことができるのではないかということ。また、高年初産の選択は必ずしも本人のキャリア形成上の戦略というような職業生活とのかねあいでばかりはかられるわけではない。これには不妊のためといった、出産を望んでも得られない状態が多く含まれたり、他方で産むことについてあまり意識をせず気づいたら高年初産の年齢にさしかかっていたりと多様な理由がある。事例の多様性を生かしながらいかに高年初産を分析するかが次年度以降の課題となるだろう。
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