初年度の調査では、中堅看護師や管理職者の方が若い看護師よりも多くの「人間の性」に関する知識を持っていた。これは、看護基礎教育よりも経験や人生経験の中で各自が「人間の性」について学んできたこと、同時に、看護師として取り組む問題として考えられる年代があることを示唆していると考えた。また、2年目の調査では、患者の性的な反応に嫌悪や戸惑いを感じながら対応策も分らずに過ぎる現状が明らかになった。そのため看護基礎教育から卒後継続して学習する必要性を考え、学習プログラムを検討した。 プログラムの内容は、「人間の性」に関する基礎知識を身体的な性(生物学的)と文化・社会的性とした。それらが心理的な性(セクシュアリティー)に影響していると考えたからである。身体的な性(生物学的性)では、男性の生理について、生殖機能、更年期障害、老年期など女性と同様に発達段階に沿った、異性の性についての理解が必要と考えた。これらは、男性患者の性的な反応が時には自然な現象であることの理解にも繋がると考えたからである。文化・社会的性は、伝統的な男らしさや女らしさなどが、メディアによって各個人のセクシュアリティーに影響しており、ジェンダー問題を生じる要因になっていること、また自分自身にもジェンダーバイヤスがあることなどを認識するために必要と考えた。これらは、相手の性を尊重する姿勢や態度に影響すると考えられたからである。 学習の機会は、まず看護基礎教育で実施し、その後継続して学習する機会を持つことが望ましいと考える。そして卒業後、性役割や看護職の専門性を考えようになった中堅看護師を対象に、「看護における性に関する問題」について学ぶ機会を設けることが効果的と考える。学習方法は、自己の性に関する認識を高める上で、経験を通して語り合えるディスカッション形式が効果的と考えた。
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