看護基礎教育では「人間の性」(生物学的なセックスと社会文化的なジェンダーを含むセクシュアリティである)の視点が弱く、「人間の性」の専門的援助を学ぶ機会がないまま患者を援助している。「人間の性」を踏まえた援助が、患者および看護師の尊厳を守ると考え、本研究では以下の3点に取り組んだ。 1.女性看護師の「人間の性」に関する意識や認識と看護援助場面での対応を明らかにする。 全国の約7000人の女性看護師に質問紙調査を行った(回収率約75%)。「性」のイメージは「性別」が24%で、「ジェンダー」や「性行動」は約5%であった。「人間の性」の学習は月経等生物的な項目は50%以上、ジェンダー等社会的な項目は5〜15%が経験していた。看護援助場面での「人間の性」に関する問題の例に身体への接触(11%)やレイプ(9%)があったが、直接的または間接的な体験ありは21%にとどまり、なしは28%であった。看護援助場面では、身体に接触する男性患者の事例では無視や注意が約30%で、心身のアセスメントや患者の相談にのる、ケースカンファレンスは少なかった。適切な対応には「人間の性」の認識に変化を与える継続教育が必要と考えた。 2.「人間の性」に関する看護援助場面での対応や、「人間の性」に関する学習の要望を明らかにする。 中堅看護師10人に半構成的面接調査を行った。患者の性に関わる援助の必要性を考えたことはなく、性に関する看護師の意識が援助に影響することに初めて気づいていた。要望として、「人間の性」に対する学習の機会があり、性について会話できる意識や環境が重要と考えた。 3.「人間の性」に関する学習プログラムの案を作成する 看護師の「人間の性」に関する認識の向上、疾患と「人間の性」の専門的知識を統合した患者の分析、専門職意識の強化を図る構造学習の案を作成した。また、看護基礎教育および継続教育では、「人間の性」の発達を踏まえた毅階的な学習プログラムが有効と考えた。
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