研究課題
平成18年度の実績は、現象学的知覚論、特にハイデガーに即した研究が中心を占めている。香港中文大学における国際シンポジウム『ソフィアとフィリア』において、Heidegger and McDowell on Virtueを発表し、近代哲学において主に主観の側からの投射として扱われてきた価値認知について、拡張された実在の成分としてこれを直接知覚する様式を、ハイデガーとマクダウエルがアリストテレスのアレテー概念に依拠して展開していることを立証した。アレテー概念を社会についての技能知とみなすとしても、そこに概念作用がはたらいているかという論点は、知覚に関しても同じ問題を提起するが、概念作用がはたらいていることを認める議論を、近刊の日本語論文「徳をめぐって:ハイデガーとマクダウエル」(『思想』)においてさらに増補して展開し、ドレイファスマクダウエル巻の論争に一定の解決と見通しを与えている。近年の「二重視覚システム論」の動向をふまえながら、『存在と時間』でハイデガーが提起している「配視」こそ、腹側視覚系を先取りして、意識的な表象、内的観念抜きの技能的知覚を先取りして記述していることを立証し、さらにこの知覚論が、行為と一体となった知覚であるとして転知覚の拡張を最終的な目的とするフッサール的知覚論、そしてその現代版であるノエの知覚論とも本質的に異なることを明らかにし、これらの点で論文「ハイデガーと表象主義」を増補して近刊予定である。
すべて 2006 その他
すべて 雑誌論文 (5件)
いま、哲学とはなにか(未来社)
ページ: 112-123
ハイデガー『哲学への寄与』解読(平凡社)
ページ: 221-228
ユビキタスでつくる情報社会基盤(東京大学出版会)
ページ: 213-224
A Companion to Phenomenology and Existentialism (Oxford : Blackwell Publishing)
ページ: 464-477
Identity and Alterity : Phenomenology and Cultural Traditions((Wurzburg : Verlag Konigshausen & Neumann) (forthcoming)