本年度は、「研究計画」に従って、「倫理性」概念(そのもの)について、主として欧米の諸文献のメタ倫理学的考察を行った。その成果は次のかたちでまとめられた。 1.弘文堂刊『倫理学事典』(印刷中)の「規範」「義務」「正」「普遍主義」等の項目を執筆し、現代のメタ倫理学上の基本概念について、私として改めて理解をまとめた。 2.「倫理性」概念に関する現在の標準的分類である「義務論vs.帰結主義」について、かつて有力であった「動機説vs.結果説」との異動をも分析しつつ、主としてロスの議論に即して検討を加えた。 3.この分類が必ずしも自明のものでなく、さらに基底に基本的な対立軸があることを、ロスについても確認しつつ、より主題的に、現代の「道徳神学」上の基本対立に即して「自己善の倫理vs.善き世界の倫理」を取り出した。 4.「内発路線」については、(「自己善の倫理」の一つである)「徳倫理」と関連させて、その一側面の分析として考察していくことの必要性を確認した。 5.「規範的立場」としてリベラリズムについて、いわばその基底的倫理性を、「善き世界の倫理」として取り出すことの可能性を確認した。
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