研究概要 |
平成17年度における研究を受け、18年度は次の研究を進めた。 1,ライプニッツによるスピノザ関係文書のうち、平成17年度において翻訳を終えることの出来なかった一連の文書の翻訳・検討を進め、基礎的作業の完成へ向けて努力した。とりわけ『エチカ』関係文書の翻訳・検討を進めることが出来た。 2,ライプニッツによるスピノザ批判に対する、あり得べきスピノザの反論を検討した。具体的には、(1)神の存在論的証明、実体概念、属性概念を初めとする形而上学的基礎概念に関する批判、(2)実体概念批判と密接に関係する個体の活動性に関する批判、(3)神概念と密接に関連する自由・必然性・可能性概念に関する批判、(4)1676年から1685年においてのみ用いられるスピノザ的な<十全な観念(idea adequata)>に関する批判、を取り上げ、ライプニッツによる批判を、スピノザ固有の論理を浮かび上がらせるための参照軸として受けとめた上で、検討を進めた。とりわけ、(3)の主題に関しては、分析的形而上学における議論との突き合わせも行い、一定の見通しを得た。 3,スピノザ-ライプニッツ間の体系的な比較研究を次の四つのテーマにおいて進めた。(1)神概念の肯定性:無限な属性によって構成される絶対的に無限な存在(スピノザ)、定義によって事象的に構成される存在(ライプニッツ)、(2)「精神的自動機械」の主題系、(3)個体の自発性:様態における個体(スピノザ)、モナドとしての個体(ライプニッツ)、(4)第ニスコラの一連の概念に対するリアクション。(4)の主題に関しては、残念ながら主題的な検討を本格的に進めることが出来なかったが、他の主題に関しては、最近の研究書の検討も含めて研究を進め、一定の見通しを得た。
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