研究概要 |
平成17年度は,西洋古代哲学における「ディアレクティケー」概念の解明のために,その準備段階として,当該概念そのものの解明に資する資料を確保する作業を中心に行なった.特に,「ディアレクティケー」にかかわる推論の論拠と推論のプロセスに関して,蓋然性(probability)の意味の解明と問題探究の方法(aporetic method)の意味を解明した.平成18年度は,前年度に,準備段階として用意した西洋古代哲学における「ディアレクティケー」概念そのものの解明に資する資料に基づき,特に,アリストテレスの『形而上学』を中心とするコルプス(著作集)における学問の方法と,問答法としての「ディアレクティケー」の関係について考察を中心に行なった.帰納的推理であるエパゴーゲー,あるいは,アポリアーの方法と「ディアレクティケー」の関係について,アリストテレス『形而上学』Γ巻における矛盾律を否定する論者に対する論駁的な記述と,『トピカ』における「ディアレクティケー」の諸規定を比較考察することを通じて,「ディアレクティケー」の問題探究の方法としての側面が明らかになった.平成19年度は,前年度および前々年度に,準備段階として用意した西洋古代哲学における「ディアレクティケー」概念そのものの解明に資する資料に基づき,アリストテレスの『形而上学』を中心とするコルプス(著作集)における学問の方法と,ボエティウスの解釈を考慮しつつ,問答法としての「ディアレクティケー」の関係について考察を行なうとともに,現代的視座からのアリストテレス主義の再検討という観点から,Detelの主張の検討および,Whiteheadのdecisionまたはcutting-off(決断または切り取り)の概念の検討を中心に行ない,現代においても,ディアレクティケー(哲学的問答法)が存立する可能性があることが明らかにした.
|