研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、欧米のこれまでの世代間倫理(未来世代への責務)が倫理として実効力をもたないとの認識に立ち、これに代わる世代間倫理の基本的な形を自然と人間社会の持続的な関係性に求めようとするものであった。この目的の遂行のために、本研究では、まず第1に、コールディング、キャラハン、パーフィット等といった、欧米の従来の世代間倫理(未来世代への責務)に関する主要な論者の議論を取り上げて、これに徹底した検討を加え、欧米の世代間倫理をめぐる議論が現実の環境倫理としては決して有効ではないことを明らかにした。次に、それでは「世代間倫理が真にどこで成立するか」を考えるために、今はその多くが失われつつある「自然相手の労働」に注目し、この「自然相手の労働」こそ、自然と人間社会との持続的な関係性を生み出していたこと、そしてそれを喪失させたものが化石エネルギーを駆動力とする「自然を超える労働力・労働体」であったことを明らかにすると同時に、この労働に含まれる共同性、歴史性、技術性が人間存在の重要な契機であり、自然と人間社会との持続的関係性を考えるうえできわめて重要であることを解明した。さらにそうした「自然と人間社会との持続的な関係性」としての世代間倫理をどのようにして実効力のあるものにするかを検討する具体的な事例として、自然相手の労働がふんだんに残されていた(そしてまた、現在の環境問題を抱え込んだ社会の出発点でもあった)昭和30年代を取り上げ、今日的観点からこの昭和30年代を丹念に読み直すことによって、「自然と人間社会との持続的関係性」としての世代間倫理の具体的なモデルを提示することができることを明らかにした。
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長崎大学『総合環境研究』 特別号
ページ: 129-137
Journal of Environmental Studies, Special Issue
Tozai Bunka Kaitsuu
ページ: 435-453